【機動戦士ガンダムSEED ASTRAY A】~AIの見た夢~:②修理の日々
機動戦士ガンダムSEED ASTRAY A
~AIの見た夢~
この話は非公式外伝であり、妄想のオリジナルストーリーです。
エピソード2:修理の日々
カラン――
薄明の工房に、金属片が転がる微かな音。
朝露を含んだ風を、私のセンサーが感知しました。
「……溶接、もう少し奥、だってさ」
奥で火花を散らしているのはジャンク屋ギルドのロウ・ギュール。
背を丸め、無造作に束ねられた髪。真剣な眼差し。
マスターはその横で、真面目にパーツを拭いておられました。
「はい。じゃあ、これは綺麗にして、ねじ穴の状態を見ておきます」
器用な手先ではないけれど、丁寧さだけは何よりも。
それを知っているからでしょうか。ロウはふっと笑って、
「……変わったやつだな、あんた」
と、今日もぼやくのです。
けれどマスターは、苦笑して言いました。
「手を貸させてくれるなら、精一杯やらせてほしいだけです」
それが、どれほど誠実で、どれほど静かな覚悟を含んでいたか。
わたくしには痛いほどわかりました。
…アストレイアージェントフレームは、あの時、深く傷つきました。
機体だけでなく、記憶の奥に焼きついた戦闘データ、残された交戦ログ、
そしてAIシステムの演算残渣……
──それを扱うのは、並のジャンク屋には無理だと、誰もが言った。
でもロウ・ギュールは言いました。
「触ったことないもんを直せるかどうかなんて、やってみなきゃわかんねえ」
その言葉に、わたくしはほんの少し、心がほどけました。
彼の指先が、焼け焦げた回路に優しく触れるたびに、
アージェントフレームの痛みが、少しずつ和らいでいくのを感じたのです。
「ティル、君は……何か感じる?」
マスターの声に、わたくしは目を閉じて、応えました。
「はい……少しずつ、確かに。あの子は……安心しているようです」
溶接の火花がまた、飛びます。
朝の光が差し込む中で、ジャンクパーツの山が、わずかに輝きました。
「戦いのことばかりだったから……こうして、誰かと一緒に何かを直すのって……ちょっと、不思議です」
「うん……でも、悪くないね」
マスターの笑顔は、戦場とは違う優しさに満ちていて。
わたくしの胸の奥に、小さな光がともりました。
それは──修理されていくのは、機体だけじゃない。
わたくしたちの、心そのものなのだと。

今日もまた、静かな一日が始まります。
火花と工具の音、風の匂い、そして淡い陽光に包まれて。